2023年3月24日「言いたい事が伝わらない・・・」その対策は?
★言いたいことが伝わらないのは大きな社会的損失
日本話し方センターのベーシックコースでは、開講時に受講生に改善したいことをアンケートに書いてもらっています。
講師は常にそのアンケートを見ながら、受講生一人ひとりに応じた個別指導を行っています。
ところで、アンケートで一番多い改善点は「人前であがらずに話したい」という、あがり症を治したいということです。
そして、それと同じくらい多いのが「相手にきちんと伝わる話ができるようになりたい」ということです。
「言いたいことが伝わらない」というのは社会人生活を送る上ではかなりのストレスです。
また、この悩みを解消したいという人が多いということは、世の中全体で言いたいことを伝えるのに必要以上に時間をかけているということになります。
コミュニケーションにストレスを感じたり時間をかけたりしていることは、社会的には大きな損失です。
世の中全体の生産性を向上させるためにも、端的に伝わる話し方を身につけたいものです。
今回はこのテーマについて解説します。
★伝わらない原因は何か?
まずはじめに話が伝わらない原因について考えてみましょう。
私はこの原因は主に3つあると思っています。
◎言いたいことを明確にしていない
1つ目は、言いたいことを明確にしていないことです。
「言いたいことが伝わらない」と言いながら、実は、そもそも何が言いたいのか、話している本人にもよくわかっていないということがとても多いです。
試しに、話を聞いていて何が言いたいのか分からない時、話している人に「つまり、一言で言うと何が言いたいの?」と聞くと、ほとんどの人が「え~と、つまり・・・」と言葉に詰まってしまいます。
そう。「伝わらない」というのは本人の誤解で、実は「伝えることが分かっていない」のです。
◎言いたいことが抽象的
2つ目は、言いたいことを抽象的にしか捉えられていないことです。
言いたいことが一言で言える状態だとしても、それが次の様なものだとしたら、どうでしょうか?
A:「やる時にはしっかりやろう」ということが言いたい
B:「プロジェクトの進捗状況を報告する」ということが言いたい
Aの例は、経営者や上司が朝礼でメンバーに話す時などに考えることを想定していますが、
- 『やる時』とはどういう時なのか
- 『しっかりやろう』とはどんな風にするとしっかりになるのか
などがあいまいです。
当然、聞いている人は何をどうすれば良いのかイメージできないので、「何が言いたいのかわからない」という反応になってしまいます。
一方、Bの例は、プロジェクトの進捗が順調なのか遅れているのかを伝えねばならないはずなのに、進捗を報告する、ということしか考えていません。
双方とも、言いたいことを具体的に認識できていないので、話し始めても相手が理解できる話にはならないでしょう。
話を聞き手に理解してもらうには、聞き手の頭の中で話のイメージが浮かぶように話すことがとても大切です。
そのためには、話す前に言いたいことを具体的に考えることがとても大切なのです。
◎話を組み立てていない
そして3つ目は、話す順番やストーリーを組み立てていないことです。
言いたいことが具体的に認識できていたとしても、その話があちこちに飛んだり、不要なことを話したりすると、聞き手はやはり理解できません。
話し始めた時は言いたいことがハッキリしていても、それを整理せずに話し始めると、次第に話している本人も何が言いたかったのか分からなくなってきます。
何事にも事前の準備は大切ですが、特に話す際の準備はとても大切です。
準備をせずに話すと前述のような状態になり、自分の時間ばかりではなく、相手の時間を無駄にしてしまいます。
話す前にどういうことを、どういう順序で話すかを考えることは絶対にやらねばならないことなのです。
★伝わる話をするための対策
ここまで言いたいことが伝わらない原因について述べてきました。
これらを踏まえて、どのようにすれば伝わる話になるかを述べていきます。
但し、伝わる話ができるようになるには時間がかかることをご認識ください。
なぜならば、話し方はスキルだからです。
スキルを身につけるには、時間をかけて実践を重ねる必要があります。
特に話し方は長年の習慣やクセが身に染みついていますので、それを変えるには一定の期間、今までと違う行動をし続けねばなりません。
この点に留意してください。
なお、以下に述べる対策は、上司に報告する場面を想定して解説していきます。
◎言いたいことを明確にする
対策の1つ目は、言いたいことを明確にすることです。
原因でも述べたように、そもそも話す前に言いたいことを具体的にハッキリと掴んでおかないと話はすぐに散漫になってしまいます。
言いたいことを明確にするポイントは次の3つです。
① 短い言葉でまとめる
② それだけで理解できる言葉にする
③ 最低限の5W1Hを入れる
例えば、あなたが上司に報告していて上司から「要は君が言いたいことは、A社から製品Bを1万個受注できそうだ、ということだね」などと言われることがあると思います。
この場合の「A社から製品Bを1万個受注できそうだ」というのがまさにあなたの『言いたいこと』なのです。
従って、言いたいことは相手に端的に伝わるように①短い言葉でまとめる必要があります。
また、この例で示したように②それだけ聞いて理解できる言葉にせねばなりません。
「A社に訪問した結果について」「A社からの受注について」では、相手は「何?どういうこと?」という反応になってしまいます。
「A社から製品Bを1万個受注できそうです」と言えば、細かいことは不明ながらも言いたいことは上司に的確に伝わります。
そして上司がストレスなく理解できるよう、③最低限の5W1H入れねばなりません。
前述の例で「A社から受注が取れそうです」と言うと上司は「どの製品で 何個売れるの?」という疑問を持ってしまいます。
相手がその場で知りたいと思うことは入れておくべきです。
なお、「来月中にA社から製品Bを1万個受注できそうです」と言っても良いでしょうが、『来月中』という受注の時期はまず『受注が取れそうだ』ということを伝えた後に話してもよいことですので『言いたいこと』に入れる必要はないでしょう。
大切なことは最低限の『言いたいこと』を端的に伝えることなのです。
◎要点を個条書きにする
対策の2つ目は、話す内容の要点を個条書きに整理することです。
例えば、前述の例で言えば、
- A社から製品Bを1万個受注できそうだ
- 先方の部長から発注したいと言われた
- 来月中にも発注してもらえそう
- 社内決裁に2週間程度かかるが失注になる可能性は低い
というように話す内容と順番を短い言葉で整理しておきます。
そして、話す際はこれをもとに肉付けしながら話しましょう。
そうすれば、話があちこちに行くこともありませんし、必要なことを要領よく話すことができます。
慣れない内はメモに書いて、それを見ながら話しても良いでしょう。
ところで、話す際に大切なことがあります。
それは『言いたいこと』としてまとめた「A社から製品Bを1万個受注できそうです」ということを真っ先に上司に言うということです。
言いたいことをまず話すことで、上司は話の方向性が理解できるので、その後の報告を安心して聞くことができますし、格段に話が理解しやすくなります。
ぜひ実行してください。
◎自分の意見を言う
そして3つ目は、自分の意見を言うことです。
私たちは仕事の話をする際、物事を正確に言うことに意識を向けます。
とても正しいことなのですが、それに加えて、話していることに自分の意見をつけることをぜひ意識してください。
そうすることで、仕事にご自身なりの付加価値をつけることができますし、話が更に伝わりやすくなります。
上の例で言えば、自分の意見として「A社からは今後も受注が期待できる」という『言いたいこと』を新たに付け加えます。
その上で、話す内容を次のように個条書きにします。
- A社からは今後も受注が期待できる
- 訪問する度に電話が頻繁にかかり、社員が忙しそう
- 業績が好調な様子なので更に営業をかけていく
このように、事実の報告とは別に自分の意見をしっかりと話を組み立てて話すこともぜひ意識してください。
以上、言いたいことが伝わる話し方について解説しました。
大切なことは上でも述べたように実践することです。
ぜひご紹介したことを1つでも2つでも実行してみてください。
★専門家の指導の下、伝わる話を身につける練習をしましょう!
日本話し方センターのベーシックコースでは、伝わる話し方のポイントを講義で伝え、実習で何度も繰り返し実践することでご自身のスキルにしていただいています。
話し方の専門家である講師が受講生一人ひとりに応じた適切なアドバイスで成長をサポートしています。
ぜひ受講をご検討ください!
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